−12−ハーバート・J・テイラー著「我が自叙伝」(菅野多利雄元RI理事訳)より引用1.真実かどうか──決して嘘をついてはいけない当社広告の文句を書いた紙きれには「当社は世界で一番の生産高を誇る台所用品メーカーである」とあった。私達はこの広告の内容を保証できないし、保証する手立てもない。2.みんなに公平か3.好意と友情を深めるか4.みんなのためになるかどうか「四つのテスト」はテイラー氏のキリスト教に対する深い信仰に裏打ちされたものです。テイラー氏の上記著書にこの点は詳しく述べられています。その書籍の中には、実際にAC社であった出来事を紹介した部分がありますので、ここでその部分を引用します。「四つのテスト」の理解を深めることに役立ててください。そこで私(ハーバート・J・テイラー)は、広告の責任者を呼んで、これからは誇大広告はまかりならぬと釘をさした。「一番の」とか「最大の」とかいう最上級はもう使わないようにしようと。また、「他のブランドより優れた」というのもやめようと。私は彼に行った。「これからは、私達の製品に関して私達が知っている事実だけを広告することにしよう」と。ある日のこと、当社のセールス・マネージャーが部屋に飛び込んで来るやいなや息も絶え絶え言うことには、5万点以上の台所用品の注文が取れるかもしれないというのだ。まだ、販売業績もさほど改善しておらず、私達は依然として破産状態にあった頃の話である。そんなに素晴らしい注文が取れたらとは、誰もが思った。しかし問題がひとつあった。セールス・マネージャーは一瞬「四つのテスト」に思いを巡らし、「だけど、この注文主は製品を割り引いて売るつもりらしいのです。とすると、それは私達の製品を宣伝・販売してくれている常連のディーラーに対して公平を欠くことになります。彼等は常に定価通りで売っていますから、定価通り売るつもりがないとすると……」と言った。私達は仕方なくこの取引をあきらめた。しかし、この取引を中止したことは、破産状態にあってはたいへんな痛手で、最も辛い決定だった。が、こう言った特別の取引を例外としてやってしまえば、それは私達が常日頃原則としている「四つのテスト」を自ら嘲笑することになってしまう。有能なセールスマンが私の許に来て言った。「『四つのテスト』をこのままの調子で実施続ければ、売上に多大な損害を与えるでしょう」と。彼は続けた。「以前、私達がしてきたことはディーラーに出来るだけ多くの品物を売ることなんです。それがディーラーに如何に負担になろうともね。」ディーラーは必要以上に多くの品物を仕入れ在庫として持っていた。その結果、ディーラーはそれほど品物を必要としていない消費者に対しても、どうにかして品物を売り捌かねばならなくなる。「そういったやり方は『四つのテスト』の第三項に違反しているね」と私は答えた。「そういったやり方ではディーラーとも消費者とも好意を持ちあうことは出来ないし、それはまた明らかに第四項の『みんなのためになるかどうか』にも抵触するね」そこで私は、以後「四つのテスト」に沿って販売活動するよう彼に言った。「結局そうする方が長い目で見たら得になるんだよ」と。
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