ロータリーの基礎知識 第3版
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−64−日本中をパニックに陥れました。これに対する解決策として、ソ連及びカナダから経口生ワクチン1300万人分を緊急輸入し、3年間にわたりNID(全国一斉投与)を実施した結果、1963年には約100人までに減少させることに成功しました。日本で行われたNIDの結果により、NIDが有効であることが立証されたので、後にWHOによりポリオ根絶の世界戦略として採用されることになりました。日本では1981年以降、ポリオの発生がありませんが、ポリオ・ウィルスの保菌者が入国する恐れがある*ため、現在でも、全ての新生児に対し予防接種としてワクチンの投与が行われています。*ポリオ・ウィルスが体内に入っても殆どの人が発症せず(発症例は100〜200人に1人程度)、ウィルスを保菌していることに気付かず海外旅行することもある。そこで、既にウィルスを撲滅した国においてもワクチンの投与は必要となる。ロータリーは1978年に3Hプログラム(Health,HungerandHumanityProgram)を発表し、1979年にフィリピンで600万人の子供を対象にポリオ・ワクチンを投与し、成功を収めました。この成功を元に、ロータリーは1985年、「世界からポリオをなくそう」とポリオ撲滅運動を開始したのです。当初、撲滅に必要なワクチンは1億2000万ドルと見込まれていましたので、ロータリーはこの金額の募金を呼びかけました。この募金運動の結果、当初見込みの2倍に当たる2億4700万ドルの寄付が集まったそうです。しかし、後にポリオ撲滅に必要な金額は2億4700万ドルでも全然足りないことが判明しました(後述の「5.資金面の推移」参照)。ロータリーのポリオ撲滅運動は、1988年に、世界保健機関(WHO)が世界保健総会で全会一致の賛同を得たことで、世界的運動になりました。その後、ユニセフとCDC(アメリカ疾病予防センター)も参加し、4団体がGlobalPolioEradicationInitiative(以下、「国際ポリオ根絶運動」と表記)という組織を構成し、人類共通のプロジェクトとしてポリオ撲滅運動を進めています。GlobalPolioEradicationInitiativeセービン博士人日本における主な出来事1959年:不活化ワクチン(ソークワクチン)の製造開始。1960年:北海道でポリオ大流行、この年患者数約6,000人。1961年:ソ連及びカナダから経口生ワクチン(セービンワクチン)1300万人分を緊急輸入。1961−1963年:世界で最初の徹底したNID(全国一斉投与)を実施。患者数が激減(患者数1960年約6,000人→1963年約100人)。このNID(全国一斉投与)が、後にWHOによりポリオ根絶の世界戦略として採用される。1981年:この年以降ポリオの発生なし。2000年:WHOに対しポリオ根絶を報告。ポリオ根絶した現在も、全ての新生児に対し予防接種としてワクチンの投与が行われている(「母子健康手帳」参照)。3.ロータリーを中心とするポリオ撲滅運動の歴史(その1)紀元前の昔よりポリオが存在していたようですが、その原因がウィルスであり、予防ワクチンが開発されたのは比較的最近のことです。1949年にエンダース(米)が培養器の中でウィルスを増殖することに成功してから、ワクチン開発の研究が進み、1953年にソーク(米)不活性ワクチンが、1957年にはセービン(米)生ワクチンが相次いで開発されました。尚、セービン博士はシンシナティ・ロータリー・クラブの会員だったそうです。

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